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―顕名―
―顕名―
代理人が「本人のために代理行為を行なう」ことを示すことを顕名という。 例えば、契約を締結する場合に「Aの代理人であるB」として署名することが顕名に該当する。顕名とは「名をあらわす」という意味である。 代理の本質については顕名説と代理権説が対立しているが、通説である代理権説に立つときは、顕名は代理の本質的要素ではないので、仮に顕名がなくとも代理権は有効に成立すると解釈されている(詳しくは他人効へ)。顕名については、次のようないくつかの問題がある。 1.顕名の本質について 民法第100条が顕名を必要としている根拠は、取引の相手方に本人が誰であるかを明示することにより、取引の安全を確保しようとする趣旨である(代理権説の立場から)。 2.顕名がまったくない場合について 例えばAの代理人であるBが、相手方Cとの間で売買契約を締結するとき、うっかりして契約書に「B」とだけ署名した場合には、原則としてその契約はBが自分のために行なったものとみなされる(民法第100条本文)。 ただし、前後の事情から見て、BがAの代理人であることが明らかである場合には、たとえ契約書に「B」とだけ署名したとしても、BはAの代理人として有効に顕名をしたものとされる(民法第100条但書)。これは相手方Cの取引安全を害する可能性がないからである。 3.本人の名前を直接表示した場合について 例えばAの代理人であるBが、相手方Cとの間で売買契約を締結するとき、うっかりして契約書に「A」とだけ署名した場合については、有効な顕名がないことになる。 この場合には民法に明文がないので問題であるが、判例は、前後の事情から代理人であることが明らかであるならば有効な代理行為として成立するとしている。 相手方Cにとっては、仮に代理人Bが本人Aであると誤信していた(人違いをしていた)としても、取引相手がAであるならば契約を行なってよいとの判断のもとに契約したため、実質上の支障はない。よって、Cの取引安全の面からも支障がないこととなる。